やまとの少しニッチな日記

徒然なるままに~自分の体験談を中心に、思ったことを綴っています。

タッチしないタッチ決済

タッチしないタッチ決済

 JCBりそなホールディングス、ベスカの3社が、「タッチしないタッチ決済」の共同研究に向けた戦略的提携を発表したとのニュースが流れた。なんでも、スマートフォン操作が不要になる新しい決済システムを構築するらしい。

 「タッチしないタッチ決済」とはこれまた妙な言い方だな。まあそれだけタッチ決済が一般的になってきた証拠だろう。このタッチ決済という言葉、いつから出てきた言葉なんだろう。

 その昔、ほとんどの人が現金で支払っていた時代にクレジットカードを手にした僕は、店頭で使うときに非常に心苦しい思いをしていた時期がある。レジでクレジットカードを出すと、非常に面倒な手間がレジにおいて発生していたので、決済までに時間がかかって仕方なかった。僕の後ろにならんでいるレジ待ちのお客に申し訳ないなと常に思っていたくらいだから、利用する際はレジが複数あって、しかも空いている時間帯を狙うなど気を使っていたのである。今でこそ、レジカウンターに置かれた端末にカードを差し込んだり、タッチしたりするだけで決済が完了するため、財布から現金を出している人よりも早くレジを通過している気がするのでカード支払に後ろめたさを感じることはなくなったのだが。

 非常に面倒な手間がかかるって、どんな?

 一例を挙げると、まず店員はレジカウンターの奥にしまってあるカード番号を写し取るような機械を取り出してきて、そこにカード会社別に作られている伝票をセットするのだ。JCBやMC(ちなみに今は無きミリオンカードのこと)等々。クレジットカード会社が増えていくと、伝票の種類も増えていって、いろんな色のがあった気がする。

 で、今度は日付の設定。小さな鉛筆みたいな道具を使って、機械についているダイヤルみたいなものをカチャカチャと回している。そもそもクレジットカードを使うお客は稀なので、日付もその都度設定していたのだと思う。それからカード番号の照会。なにやら手にした紙に細かく書かれた数字と照合している。おそらく盗難などで無効になっているカードじゃないか調べているんだろう。老眼の店員だったら探すのに苦労するだろうな。あ、当時は老眼なんてどんなものかわからなかったので、そんなことを思ったことは一度もないけどな。しかしこの作業、無効番号が膨大な数になっていったら大変だろうな。

 また、カードでの支払額が高額になるとお店からカード会社に電話をかけ、途中で電話を代わってもらって高額決済の了承を得なければいけなかったので、これも時間がかかる要因だった。

 そしてカードのエンボス番号を機械を操作して伝票に写し取る。慣れないから苦労していたようだ。どっちの方向から動かせればいいのか迷う店員も多かったし、そもそも伝票のセットが難しいため番号が斜めにずれていたり、判別できなかったからやり直しをしたり。

 そのあと、決済金額やお店の番号などを伝票に書き込んで、ようやく「サインをここにお願いします」と言われて伝票を渡されるのだ。伝票に自分のサインを書くと、店員はカードの裏面にサインされた署名との照合作業を行い、カードと伝票の控えとレシートをいただいてようやく完了となる。ちなみに、伝票は何枚もの複写伝票になっているため、カードの控えがどの伝票なのか知らない店員も多く、カード会社に送付する重要な伝票を控えとして渡されたこともあって、連絡が来て後日交換させられたこともあるくらいだ。

 書くだけで疲れたわ。

 で、なんの話だったっけ?

 昭和の時代におけるクレジットカードを使ったレジの精算方法じゃなかったよな。

 ああ、このタッチしないタッチ決済の話に戻すね。

 何らかの通信技術を使って、来店者のスマートフォンと、店舗に設置された決済端末やIoTデバイスと連携することで、バッグやポケットにスマホを入れたまま、認証から決済手続きま完了できるとのことだが、どうやってレジで精算している商品と僕のスマホと関連させるのか不思議に思ったのだ。精算人が自分ひとりだったらまだわかるけど、大勢の人が並んでいるレジの場合、たとえばこの前のショッピングセンターの福袋レジのような場所だったら、知らない間に僕のスマホから次から次へと他人が購入した福袋の金額が清算されてしまうんじゃないかと。気が付けば口座の残金が無くなっていたとか(笑)

 「買った商品とスマホと連携させるために、スマホをここにかざして本人確認を行ってください」って、レジで言われたら本末転倒だしな。まあそのためにいろいろとこれから実証実験をして、使えるシステムとそのための機器を整備していくんだと思うんだけど、お店にそのシステムを新規導入する資金があるのなら、スマホのタッチ決済ができるようにしてもらうだけでいいんだけどな。suicaだったら端末の操作は必要ないし、タッチ決済でも電源を入れるだけで済んじゃうし、それほど手間に感じたことはないよ。ただ、できればどこのレジでも同じ機器が入っていると、はじめて利用するお店でもタッチする場所に悩まなくていいんだけどね。今は、多様な決済方法が混在していて、利用できたりできなかったり、タッチであったり物理カードが必要であったり、差し込む場所やタッチする場所がお店ごとに異なっていたりして、いつも行くお店以外ではこれがストレスになってしまっているんだわ。

 あと、このタッチしないタッチ決済のシステムのもう一つの戦略として、お客がお店にやってきたときに、そのお客の過去の購買履歴やその瞬間に興味をもって見ている商品がわかるようになっていて、それによってVIP向けサービスや顧客のニーズに応じた優待・クーポン配信等のサービスが可能になるようなことが書かれていた。

 これはヤバい。僕の楽しみのウインドウショッピングができなくなる。

 「このお客、お金持ってないやん」「この人の購入履歴には、この店の商品はないね」「なんで興味もないのに家具売り場に来てるのかな」「100均ショップと回転すし店しか履歴がない人だから接客しないでおこう」等々、いろんなことをつぶやいている店員の雑音が聞こえてきそうや。そう、まるで銀座のブランド交差点、シャネル、ブルガリ、ヴィトン、カルティエの各店舗から感じる、「お呼びじゃないよ」という無言の圧力みたいなものを。