「あ、しまった!やられた〜!」
雨が降ってるある日の出来事でした。
所用であるお店に入ったのですが、持っていた自分のカサは店内に持ち込めず、
仕方なくお店の入り口のカサ立てを利用しました。
大事にしていたとっても高級なカサだったし、これまでにもカサを盗まれる経験
が数回あったことから「嫌だな」って思って注意していたのだが、この始末である。
いつもはできる限りカサを持ち込んで手元に持っているのだが、店内は大勢のお客で
込み合っていたこともあり、遠慮したのが間違いだったのかも。
持ち主の監視下から解き放たれた高級なカサは、見事に姿を消してしまったのでした。
店を出て、自分のカサが無くなっているカサ立ての前で途方に暮れていましたが、駐車
場まで行くのに濡れるわけにもいかないので、もう一度店内に戻って店員に相談。
店員は店の奥に戻ったあと、ぼろぼろの黒のカサを持ってきて僕に見せました。
「お前が無くしたのは、このカサか?」
「違います。わたしが盗られたのは、そんなにみすぼらしいカサではありません」
って内心思ったのですが、声に出してそれを言っちゃうと、店員が目をつり上げて「この
うそつきの欲張り者め!!」と怖い顔で怒鳴って店の奥に引っ込んでしまいそうだったので、
仕方なく、そのカサを店からお借りすることにしました。
どうせなら、ぼくが持っていた高級なカサ以上に価値のある、金のカサを最初に示されたら
「違います。わたしが盗られたのは、そんなに立派なカサではありません」
と答えただろうに。
そうすれば、店員は、次に銀のカサを出してきて、「では、このカサか?」とたずねてくるから、
「いいえ。そんなにきれいなカサでもありません」と、
そして、「では、このカサか?」と店員が3番目に今の使い古した汚いカサを見せてくれれば、
「そうです。そうです。そのカサです。どうもありがとうございます」ってなって、
「そうか、お前は正直な男だな」と店員は感心して、金のカサも銀のカサも渡してくれたのにな・・・。
残念!