ホエールウォッチング船は、港を出てポイントへと向かう。クジラがいるという情報はたぶん共有されていると思うので、ただやみくもに海にでているわけではないはずだ。
今日は、島から結構離れたところへ向かうとの説明があったので、しばらくの間はクジラを見かけることはなさそうだ。
それでも、1分でも早く見たい気持ちがあったので、ずっと海の彼方を眺めていた。
雨こそは降っていなかったけれど、折からの南風。結構波があって、ボートと波とぶつかり合う振動が船底から伝わってくる。
南風の影響なのか、今日の気温と湿度は相当高いようだ。海の上なので寒いという情報をもとに厚着をしてきている上に、ライフジャケットまでつけているものだから、そのうちに体が汗ばんできた。
暑い〜〜〜!!
ライフジャケットのファスナーを全開にして暑さをしのぐ。
とにかく、厚着をしすぎてしまった・・・。
船は順調に進んでいくけれど、暑さに加えて乗船前に飲んだ船酔い止めのおかげで、意識がもうろうとなってきてしまった。
暖かい波風に吹かれながら、心地よい振動と船の揺れに任せて遠くを眺めているうちに・・・Zzzzz。
いつの間にか夢の中。
どれくらい眠ったのだろうか、突然それまで猛スピードで走っていた船の速度が遅くなった。
「今、こちらのほうでクジラを確認できましたぁ」
ガイドさんが叫ぶ。
『ガイドさんだけ確認できても、こっちは見れてないんだよなぁ。これでクジラが見れなかったら、金返せよ〜』と、少々寝ぼけたことを考えながら我にかえった。
クジラみなきゃ!
ガイドさんが船内にいる乗客を船の前の方まで誘導していたので、とりあえず船首まで移動することにした。
ここなら、前方の海域をすべて見渡すことができるのだ。
ビデオカメラの電源を入れて、クジラの出現を今か今かと待った。