右にでるか、左にでるか。
まったく予想がつかないクジラを追い続けるのは、想像以上に疲れる。船の前方にいたときには、大海原を見渡すことができるため、前方だけを見ていたらほぼ180度の視界の中でクジラを発見することができるのであるが、クジラに向かって動いている船の後方からでは、左右どちらかしかクジラが見えないので、とても不安になる。最悪の場合、前方だったら全く見えないのである。
結局、またもやクジラを見失ってしまった。予想以上に疲れたため、後ろの席に座ってぼ〜〜と海を眺めて過ごす。
さっきまで暑かった日差しも、幾分和らいできた。太陽が西の空へと傾いてきているのである。
そろそろ、終わりかなぁ。
そう思った時である。
ふと、小さな何かが左前方の視界に入った。と同時に、「ああ〜〜、クジラだ!」と誰かが叫ぶ。
遙か彼方ではあったが、たしかにクジラが見えたのである。それも、今までとは違う形で。
今までのクジラといえば、潜る直前にしっぽが海面からチラリと見えるか、もしくは潮吹きのしぶきがパッと海面に上がるかのどちらかだったのであるが、今回のはちょっと違った。
クジラそのものが見えたような気がしたのだ。
目を凝らしてさきほどの海をもう一度注意して見つめていると・・・・
(|||ノ`□´)ノオオオォォォー!!
な、なんと、クジラが大きく海面から飛び出して、そのままざっぶ〜〜んって海面にダイブしているではないか。
あまりにも遠すぎて、背中からなのか、側面なのかはわからなかったが、たしかに体を半分程度海面から出して、そのまま倒れこんでいたのである。
そして、もう一回!!、その雄姿を見せてくれたのである。
船がクジラのほうに向かって動き出したときには、もう二度とクジラが海面に姿を見せることはなかった。どうやら、遠くだとその姿を見せてくれる恥ずかしがりやのクジラのようだ。
いや、僕の乗っている船には姿を見せないようにいやがらせをしながら、遠くで遊んでいるのかもしれない。
とにかく、久々にクジラが見えたことで、船上はにわかに活気づいた。今までのあきらめムードが嘘のように、またみんなが多弁になっていた。 ^^
とりあえず、あそこまで見れたら、ホエールウォッチングの歴代ワースト記録の更新とまではいかないだろうなぁ。